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物語全般の骨組みはだいたい決まってきたので、あとは私次第。うん、誰お相手とは全く決まってないんだけど・・・あ、この時点でダメだ、私。

ではでは以下、続きます。





 暗い道を彼女は歩いていた。トンネルのようだと思ったけれど、明かりもない道だったのでそれすらもわからない。暗い道の終わりにはきっと彼がいると、それだけを信じて、彼女は歩いた。

 
duo


 例えるならそれは小さな点から、わずかに広がっていく水面。視覚から嗅覚、そして触覚、最後に聴覚。

 悲鳴が重なって聞き取れない。そんな状況をヘルガは一度だって想像したこともなかったし、まして自分がそんな状況に遭遇するなんて夢にも思っていなかった。視界は赤に染まっていく。綺麗な――おそらくは美しい集落だったのだろう――自然の色を、不自然な赤が染めていく。それは驚くべき速さで。血のむせ返るようなにおいにヘルガは息を詰まらせ、着ていたドレスの袖で鼻を覆う。同時に溢れてくる涙も拭う。

 ヘルガには黒い影が見えた。その黒い影が人々を次々と襲っていく。
 
 はっとして杖を探した。サラザールやゴドリック、ロウェナ程、魔法は得意ではないが自分だって彼らの同胞だ。それに、身を守るくらい、たぶん、できる。小ぶりの杖をドレスから取り出し、手に持って構えておく。未だにヘルガには立ち上がるような気力がないものの、杖がある、という安心感は計り知れなかった。

 杖が見つかり、ほっとしたのもつかの間。

 ヘルガはその首筋に冷たい感触を感じ、小さな悲鳴を上げた。

「お前、何者ね」

 自分の首筋にあてられているものが爪だと気づいた時のヘルガの衝撃といったら。手首を後ろに拘束されているせいで、体は動かせることができないので、ヘルガはそろーりと首だけ器用に動かしてみせた。相手の顔などはわからなった。ただ、相手も魔法使いではないということだけヘルガは理解した。魔法使いならまず、こんな拘束の仕方はしない。

 これほどの人々を大量に殺戮をしている人物がたった一人だとはヘルガも思ってはいなかったが、恐怖で上手く回らない頭で考える。――この人数から逃れられる方法を。

 ヘルガが口を閉ざしているのが気に入らないのか、拘束している力がさらに強まった。

 痛い。もしかしたら初めて感じる痛みかもしれない、とヘルガは思った。泣きそうなほどに痛いなんて。

「フェイタン、そのへんにしてあげたら?」
「シャルは黙ってな。この子がどうであろうとあたしらには関係ない」

 滲む視界でヘルガは彼らを見た。皆がみんな、ヘルガにとっては風変わりとしか言いようのない服装をしており、ヘルガには彼らが着ている服の名称すらわからなかった。とりあえず見慣れたローブを着ている人物はいないようだった。そして、彼らの中の何人かはヘルガをきつく睨んでいる。

「コイツ、喋る気ないみたいね。いい度胸。なら、ワタシが体にきくまで」
 
 ヘルガをきつく拘束している男が痺れをきらしたようで、首筋に当てている爪を深くヘルガに突き刺した。何をされたかすらヘルガにはわからなかった。熱が一気に集中する。一気に深くせず、少しずつヘルガを苦しませるそれに、いっそ気絶してしまいたいとヘルガは思った。

 こういうとき、どんな魔法をつかえばいいのか。普段なら、スラスラとでてくるはずなのに。頭が混乱しているのか、どの呪文を使えばいいのか見当も付かなかった。

 プロテゴ(護れ)で身を守る?――彼らはおそらく魔法では攻撃してこないわ。無意味よ。
 インカーセラス(縛れ)で縛ってしまう?――ヘルガ、こんなに大人数を一度になんて今までできたためしがないでしょう?
 インペディメンタ(妨害せよ)で逃げる?――あなた、さっきの彼らの動きを見ていなかったの? すぐ追いつかれるのが関の山よ。
 ステェビーファイ(麻痺せよ)で気絶させる?――人数が多すぎる。無謀ね。他の攻撃呪文も、この分では無理があるわ。

 頭の中で浮かんでくる呪文を、ことごとく何故かロウェナの声で否定される。その間にも痛みがヘルガを襲う。

 もういっそなんでもいいからこの際呪文を言ってみようか、なんて考えがヘルガによぎる。ちょうど、足元には革表紙の日記が。見覚えのある日記にヘルガは少し痛みのことを忘れることが出来た。あれは自分が毎日欠かさずにつけている日記だ。もちろん特別に仕様はしてある。
 
 とりあえず、日記を呼び寄せる呪文はアクシオ(来い)だ。あ・・・あ・・・あ、から始まる呪文。アバダ・・・はダメだ。これだけは生涯つかうことはないだろうとヘルガは胸に刻み生きてきたのだから。
 あ、から始まる呪文――あった。

 そこからのヘルガの行動は早かった。いつもの彼女では考えられないほど。痛みの中でヘルガは無言呪文で傷を癒していく。いつかは気づかれるだろうとは思っていた。特に、黒い服の、黒い彼に。その彼が何か言おうと口を開こうとする前にヘルガは呪文を唱えた。もちろん口には出さずに。


(アクシオ、日記よ、私の手に来て。どこか安全な場所へ、どこでもいいから、どうしても行きたいの。この人たちから、逃げる為に――姿あらわし)



***



「団長、あの子――」
「ああ、どういうカラクリかは知らないが、一般人にしか見えなかった。念・・・いや、それにしてはなにも感じなかった」

 さっきのありえない出来事の後、団員は皆後味の悪い思いをかみ締めていた。蜘蛛ともあろうものがあれだけ揃っていながら女についてなに一つわかりもせず、まんと逃げられた、ということが許せないのだ。
 真剣な顔つきで尋ねるマチにクロロは独り言のように呟いた。それを見て、マチを含む、以下団員が渋い顔をした。一部は関係ないとばかりに無関係を通しているが。

 興味はある。が、それを手に入れる苦労を考えると、そこまで欲しいとは思わなかった。欲しい物は奪う。それが盗賊だ。

 でもそこまで欲しい物じゃなかったら?

「――」

 気が変わるまで待つつもりさ。俺自身のね、とクロロは一人ごちた。気まぐれなのはもとからだ。どうせ、いつかまた近いうちに出会うだろう。そんな予感がクロロにはあった。






あとがき。
はい、ハンターの世界でしたー。とりあえず時間的には、ハンター試験のだいだい1年くらい前って感じです。
書きたいことや、語りたいことはたくさんあるけど、今からネタバレはつまんないので、本編で少しずつ明らかに出来たらいいなぁ、と思います。とりあえず伏線張っとこう、的な。笑
日記・・・リドルの日記ならぬ、ヘルガの日記ですね。
ではでは。
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