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第4話です。ちょっと小話とかはさみたい気分なんですけど、物語を少しだけ進めようと思います。最近、気が付いたんですが、私、本編よりもその横道にすれた日常話が好きなようです。

ではではー。







16  April 1998
魔法が使えないから、彼らとは言葉もそう、通じない。昨日は綺麗な女の人が私のところにやってきた。相変わらず言葉は通じなかったけれど、あの男の人たちじゃなくてほっとしました。でも、この女性も、彼らの仲間。昨日のことが頭から離れない。私はどうなるの? ここはどこ? 泣きそうなほど、心細いけれど、信じてさえいれば、いつか必ず――


quattuor


 半ば無理やりにクラピカと旅をさせてもらうことになったヘルガ。もちろん旅といっても泊まるところは主に野宿だという。ヘルガは生まれてこのかた野宿など経験したことがなかったが、自分からクラピカについて行くと決めたのだ。それにヘルガにとって今、頼れるものはこの自分よりもずっと幼い少年しかいないのだと思うと、ぐっと心にくるものがあった。

 かすかな火のもと、ヘルガは日記を手に取った。

 なぜか昨日、地面に放り出されていた日記。この世界にやって来たときに日記もこちらへと渡って来たのだろうか。わからないことはまだあるが、今までクラピカが傍にいてこの日記を取り出すような暇はなかったヘルガにとっては今がチャンスだった。クラピカはヘルガから少し離れた木の傍で武器を立てて目を閉じている。眠っているようだ、とヘルガは彼をじーっと見つめた。

 そーっと日記を開く音にも気を配る。クラピカに気づかれないように。クラピカに見られたとしても困るようなものでもないけれど、できれば今はヘルガ一人で見たかったのだ。

 ヘルガは元よりこの日記に細工をしており、その細工とは「日記の内容は、その日付と同じ日にしか見られない」というものだった。ロウェナにそのことを話すと、日記の意味がなくなるじゃないと盛大に呆れられたが、ヘルガはこの日記をとても気に入っていた。日記をつけるということに意味があるのだ。それにもう一つ。この日記には優れた点があった。なんと、自動的に日付が書き込まれるのだ。これも、どこか忘れっぽい・・・というかぬけているヘルガにとっては重宝すべきものであった。

 なつかしい革表紙の表紙をめくると、そこにはヘルガの全く予想していなかった内容が書いてあった。

「? 私の書いた文字?」

 魔法が使えない。彼ら。女の人。言葉も通じない。

 当然、ヘルガの日記なのだから、ヘルガ自身が記したに違いないのだが・・・おかしい。ヘルガが書いた記憶のない、今日の日記が既にそこには書かれているのだ。それもヘルガには身に覚えのない内容で。でもそこに書かれてある筆跡は紛うことないヘルガのもの。

 日記の日付は今日のもの。加えて年月日までおそらく。

 そこに書かれているなんとも不穏な内容に頭を悩ませることになったヘルガをおいて、長い夜のはじまりを告げるように篝火が音を立て、こんなとき彼らならどうしただろうと考えて、ヘルガはまた涙ぐみそうになる瞳を無理やり閉じた。




***



 こそこそと。例えるならまるでネズミが食料を探しているかのようなそんな物音。音が止み、遠くでふくろうの鳴き声が聞こえ、クラピカはゆっくりと目蓋を開けた。夜が明けていない空はまだ暗い。

 うっすらと火の元に照らされた涙の跡を彼女の頬筋に見つけたが、クラピカはまたそっと瞳を伏せた。

 涙はいずれは乾くだろう。それよりも。彼女が目を覚ましたら、その時は彼女が少しでも笑顔でいてくれるように。彼女にとって少しでも良い一日でありますように。





あとがき。
次は旅ー。たぶんこれから先もクラピカばっかし出てくると思います。
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