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久しぶりにラブレボ一之瀬さん夢!

設定は昔の連載設定。婚約者、少し男嫌い。百合香のいとこ。
覚えていてくださっている方、いるのかな?笑






君ありて


彼との距離感が好き。
触れるか触れないか、好きか嫌いか。ちょうどその真ん中を進んでくれるから。

「そろそろ約束の期限ね」

おじい様が言い出した、彼のおばあ様が言い出したこの不思議な婚約。
自由なはずの高校生活も不自由なまま終わりが近づいている。
私はまだ答えを出せずにいる。彼の優しさに甘えて。行動は甘受する。でも、心はまだどこかで否定している。

私を抱きしめている腕が少し止まった。

「俺は別にかまわない」
「――あの時みたいに私が泣き叫んでも?」

初めて触れられたときのことはよく覚えていない。ただ怖かった。そして怖いのは何より自分自身だった。
彼はそんな私を見て、額に唇だけ落としてその後バスローブを羽織って部屋を出て行った。後悔ばかりだ。バカなことをした彼、そして傷つけた私。

優しい触れるだけのキス。慣れてしまったのはいつからだろう。

「蓮。私ね、こうしてる今もわからないの。蓮のことは好きだと思う。ライクの意味でね。でも嫌いじゃないの。どこかでこの結婚を納得してる私がいるの」
「三年前とは大違いだな」
「言わないで。忘れたい過去なの」

蓮が私の首筋に顔をうずめる。祈るように。

「俺はお前以外を連れ歩く気はないんだ。お前以上の女も見当たらない。どうしてくれるんだ?」
「知らないわよ。そんなの。私だってね、蓮が男の人の基準になっちゃって困ってるだから」
「困る?」
「ええ。どうしても比べちゃう――聞かなかったことにして」

口に出してから気が付いた。失敗。
蓮はひどく近い距離で私の瞳を見つめる。自信あるいつもの笑み。

「ミス、自惚れても?」
「わかんない」

蓮だけが例外だ。触れられても大丈夫。愛してると囁く声に惑う。嫌悪は感じない。
頭ではじき出した答えに呆れる。今まで見ないふりしていたものが多すぎた。私の心は正直で、でも怖がりだ。

「式当日に花嫁に逃げられる、なんて俺は経験したくないからな。――好きにさせてみせるさ」

綺麗な笑みで、でも自信ある彼のこの表情は好きだ。たぶん私しか知らない。
気が付いた瞬間から好きがひとつ、心の中で形になった。

この思いを彼に伝えたい。
私は初めて自分から彼に唇を寄せた。

目を閉じて心の中で(好き)と言うの。
ほら、もう怖くない。


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